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手漉きと機械漉き

コラム, , 道具の話

紙は原材料によって大きく洋紙と和紙に分類されます。

洋紙というのは、木材を原料にしたパルプ使って主に機械で大量に作られており、
一般的に文具や書籍など生活の中で多く使われています。

和紙というのは、主に楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)を原料に昔から手漉きで作られてきたものですが、現在では機械漉きでも作られるようになっています。

こちらでは、和紙の「手漉き」と「機械漉き」についてご紹介します。

 

紙の作り方

 

手漉き

和紙はその名の通り、日本で作られた手漉きの紙のことを指します。
もともと中国から紙の手漉きが伝わり、それが独自に変化し、受け継がれて今日に至っています。
日本で伝統的に行われている手漉きの主な作業を簡単にご紹介します。
手漉きの和紙は、完成するまでにたくさんの工程があり、均一に漉くためには熟練の腕が必要とされています。

〈工程〉
①手漉きの原料である楮(こうぞ)の木の表皮を煮て、必要な繊維質だけを取り出します。
ソーダ灰を入れて煮ると白い紙になり、 何も入れずに煮ると自然の生成り色の紙になります。

②①で煮た繊維質をたっぷりの水に晒します。
木の皮を煮ることで出てくる灰汁(あく)を洗い流します。
昔は川の水を使って行われていましたが、今では大きな桶を使いたっぷりの水で晒しています。

③②の繊維質を叩き、繊維と繊維以外のものに分離させて、さらに細かい繊維を取り出します。
叩きほぐすことで、繊維がほぐれ細かく柔軟になります。不純物を取り除き、純度の高い良質の和紙にするためです。

④さらにたっぷりの水の中で攪拌していきます。
攪拌がだんだん進むと、どろどろのお粥のようになり、繊維がふわふわと水面に浮いてきます。
叩解が不十分だと、きちんと分散されないため漉き溜まりができる原因になったり、粗く腰の弱い強度の低い紙になってしまいます。

⑤④が終わったら、一度脱水します。

⑥再度水に溶かし、葵科の植物とろろあおいの根を使った「とろろあおい」を混ぜます。

⑦ようやく紙を漉きます。
漉槽の中に⑥を入れ、すのこに流し込み、くみ上げて上下左右に揺らしながら漉いていきます。
揺らして漉く方法は「流し漉き」と言われ一般的な手法ですが、すのこを動かさずに水分を落とす「溜め漉き」と言われる手法もあります。地域によって作り方が少し異なります。流し漉きは均一に漉くのが難しいとされています。

⑧圧力をかけて余分な水分を落とします。一枚一枚漉いた紙をある程度まとめてひと塊にし、水抜きします。
水抜きしない作り方をする地域もあります。

⑥天日で乾燥させます。
カチカチに乾燥するまで約10日間ほどはかかるそうです。

⑦カチカチに乾燥した紙の塊を今度は一枚ずつはがすために水に浸します。
浸しすぎても紙が破けてしまうし、水が少ないとはがれないため、とても慎重に作業を行います。

⑧大きな鉄板をアイロンのように熱し、そこに一枚ずつはがした紙を刷毛などを使って空気が入らないよう貼りつけて乾燥させます。手漉きの和紙の裏面をよく観察すると刷毛のあとが見られます。これはその作業によるものだと考えられます。
今ではほとんど鉄板が使われていますが、昔は木の板に貼り付けて天日乾燥させていました。

⑨ついに和紙の完成です。
ようやく出来上がった和紙は、必要なサイズに裁断されて製品になります。

手漉きの和紙の中でも、加工を施した和紙や加工をしない和紙があります。
華やかな柄や色がついた料紙(りょうし)と呼ばれる紙は、優雅な仮名作品に使われます。

 

機械漉き

全てにおいて手漉きとは比べものにならなほど大きな機械を使います。
大きな機械を使うことで、手漉きに比べて効率的に大量生産が可能となります。

〈工程〉
①大きな釜で機械を使い攪拌しながら、パルプが主な原料とした液で煮ます。手漉きとは違い、パルプを主原料にします。

②大きな釜で繊維質を叩き、繊維と繊維以外のものに分離させて、さらに細かい繊維を取り出します。
叩きほぐすことで、繊維がほぐれ細かく柔軟になります。

③さらにたっぷりの水の中で攪拌していきます。
ここでも手漉きよりも大きな機械で行います。

③紙を漉きます。
大きなベルトコンベヤー式の機械を使い、すのこの代わりに硬い毛布を使用して紙を漉きます。
毛布伝いに水分が下に落ち、紙の素が毛布の上に残ります。その後、いくつかの巨大なローラーで圧力をかけ、脱水を行います。

④大きなドラム型のアイロンをあてて巻きながら、直接乾かします。
アイロンをあてた面が、ツルッとしたきれいな紙の表になります。これできれいで均一な和紙の完成です。
紙の裏面には毛布があてられていますので、刷毛目が紙に残りません。手漉きのように刷毛を使って鉄板に貼りつけることはしないからです。ですから手漉き和紙の裏面に見られる刷毛目は、機械漉きの和紙には見られない特徴です。

⑤ロール状に巻き取ります。
ドラムから出来上がってくる和紙をロール状に巻いていきます。
ロール状に巻いたものを商品の各サイズに裁断されます。

 

手漉きと機械漉きの大きな違い

 

手漉きと機械漉きの大きな違いは、まず作られる紙のサイズが挙げられます。
手漉きは一枚ずつ漉いて作られます。一枚一枚が手作業のため、作る大きさにはある程度限界があります。
対して、機械漉きはひとつなぎにした長い紙を作ってロール状にし、必要な大きさにカットすれば一度に量産が可能になります。

また原料にも違いがあります。
手漉きの和紙は、楮や三椏など伝統的な木の表皮の繊維を使って作られますが、機械漉きは木材パルプを主原料にして作られています。

機械漉きだからニジミが少ない、手漉きだからニジミが多いというイメージをお持ちの方も少なくないようですが、機械漉きでも手漉きでもニジミの調整を行うことは可能です。
ただ、近頃はニジミの少ない紙が好まれる傾向があるので、総体的にニジミが少ないように調整されていることが多くあります。
 
例えば、和紙は主原料である楮・三椏・雁皮の割合が多くなればなるほどニジミが少なくなり、価格も高価になります。
昔は紙が漉かれた後、工場で一定期間寝かされた上で出荷され、問屋様・小売店様での寝かす期間を経て消費者に届き、さらには消費者が一定期間紙を寝かした上で使用されてきました。

製品後に紙を「寝かす」という工程がいくつもの段階でなされていたのです。
 
近年では、消費の減少とともに紙を「寝かす」という工程が省略されるようになってきています。
そのため、工場が紙漉きから出荷までの期間を短縮し、 また消費者が購入後すぐに使用できるようにと、薬品を用いてニジミの調整を行うようになっています。
 このニジミを調節する薬品をサイジングと呼び、おおよそ10段階に分けられ、ニジミが調整されています。
 
ニジミ止め加工が施されていない紙は、「紙を寝かす」ことで水分や糊気が飛び、ニジミが抑えられたり、紙が締まることで書きやすい紙になるといわれています。
ニジミ止め加工を施された紙の場合は、工場から消費者の手に渡るまでの期間を想定して調整が行われているため、消費者は紙を寝かすことなくすぐに使うことができるようになっています。
このように聞くと、ニジミ止め加工を施された紙の方が良いように感じますが、ニジミ止めが施された紙は「紙を寝かす」または「数年使用せずに保管」することで、紙質が大きく変わり、別の紙と思えるほどに変化してしまうことがありますので、注意を払う必要があります。
 

その他にも書道用紙には、ニジミ止めに胡粉(ごふん)が使われているものもあります。
胡粉が施された紙は、さらっとした手触りとマットな質感で白色が美しいのが特徴です。表面に細かい粉をまぶしたような質感なので、筆運びに少し引っかかりを感じますが墨とのコントラストが美しくニジミにくい紙だと言えるでしょう。

〈胡粉が使われている紙のご紹介〉

紙がニジミやすいと一般的に書くのが難しいとされています。そのため、書道初心者の方などには敬遠されることが多いのです。ただ、ニジミというのは墨が横に広がっていく繊細な表現力を持っていますので、紙それぞれの特徴を理解して使うことが大切です。


書遊Onlineでも唯一、機械漉きでありながらニジミ止め加工をしていない書道用紙が「学生白鳳」です。「学生白鳳」はニジミ止めの薬品を一切使用せず、原材料と高い技術でニジミを抑えた半紙となっています。

 

また、かな用紙にもドーサ引きと言ってニジミ止めの加工がされています。
ドーサ引きというのは、膠(にかわ)とミョウバンをお湯に溶かしたドーサ液を刷毛などで紙に塗って仕上げるニジミ止め加工のことです。
かな文字は筆の先を使い、流れるように細い曲線で書くため、ニジミが多い紙ではうまく書けません。そのため、紙の表面でサラサラと円滑に筆運びができるようドーサ引きをした紙を使用します。

 

精度や技術の進歩により、今では機械漉きと手漉きの見分けがほとんどつかなくなってきています。手漉きだから・・とか機械漉きだから・・・とかではなく、書き手が何をどんな風にに書きたいのか、作品用か練習用かでも違ってくるでしょうから、総合的な観点からご自身に合った紙選びをしていただくのが一番です。

 

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