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書道紙の「手漉き」と「機械漉き」

コラム, , 道具の話

書道に使う紙は、製法によって「手漉き」と「機械漉き」に分けられます。
もともと書道紙は手漉きですべて作られていましたが、西洋から洋紙(機械漉き)の技術が伝わり、機械漉きでも作られるようになりました。
一般に、“手漉きの紙=よくにじむ”、“機械漉きの紙=にじみにくい”という印象を持たれる方が多いのですが、実際にはそういうわけではありません。
ニジミに関しては、サイジング剤(にじみを止める薬)という薬剤で調整し、紙の原料の配合によってもニジミの程度に差が出ます。
機械漉きの技術が近年進化し、手漉きに近い機械漉きの紙もあります。
書遊Onlineでは、製法のほか、ニジミやすさの目安を載せております。
書道紙を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。

こちらのコラムでは、日本の和紙における「手漉き」「機械漉き」の製法の違いと見分け方、特徴についてご紹介いたします。

手漉き紙の製法

手漉きの紙漉きの様子

煮熟(しゃじゅく)

手漉きの原材料を煮て、必要な繊維質を取り出します。
和紙は、主に楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)を原材料に作られます。
ソーダ灰を入れて煮ると白い紙になり、 何も入れずに煮ると自然の生成り色の紙になります。

煮熟

晒し(さらし)

煮た繊維質をたっぷりの水に晒します。
木の皮を煮ることで出てくる灰汁(あく)を洗い流します。
昔は川の水を使って行われていましたが、今では大きな桶を使いたっぷりの水で晒しています。

晒し

叩解(こうかい)、叩打(こうだ)

繊維質を叩き、繊維と繊維以外のものに分離させて、さらに細かい繊維を取り出します。
叩きほぐすことで繊維がほぐれ細かく柔軟になります。
不純物を取り除き、純度の高い良質の和紙にするためです。
叩解した原料は一度脱水します。

攪拌

再度たっぷりの水の中で攪拌し、「とろろあおい」を混ぜます。
とろろあおいの根を細かく潰して水に漬けておくと、ねばねばとした液体になります。
このとろろあおいが、楮の繊維を均一に水の中に広げ、簀の上での水の引き方を調節する役割を果たすのです。
攪拌がだんだん進むと、どろどろのお粥のようになり、繊維がふわふわと水面に浮いてきます。
叩解が不十分だと、きちんと分散されないため漉き溜まりができる原因になったり、粗く腰の弱い強度の低い紙になってしまいます。

紙漉き

溶液を入れた漉舟(すのこ)を上下左右に揺らしながら漉いていきます。
以前は、漉舟を漉槽に沈めてそれを持ち上げて濾していましたが、大きな紙だと均一な厚みで漉くことが難しいため、漉舟を固定して上から溶液を流し込むスタイルになったそうです。
揺らして漉く方法は「流し漉き」と言われ一般的な手法ですが、すのこを動かさずに水分を落とす「溜め漉き」と言われる手法もあります。
地域によって作り方が少し異なります。
流し漉きは均一に漉くのが難しいとされています。

紙漉き
紙漉き
紙漉き

水抜き

圧力をかけて余分な水分を落とします。
一枚一枚漉いた紙をある程度まとめてひとかたまりにし、水抜きします。
水抜きしない作り方をする地域もあります。

漉いた紙をひとかたまりにする

乾燥

天日で乾燥させます。
カチカチに乾燥するまで約10日間ほどはかかるそうです。
カチカチに乾燥した紙の塊を、今度は一枚ずつはがすために水に浸します。
浸しすぎても紙が破けてしまうし、水が少ないとはがれないため、とても慎重に作業を行います。
大きな鉄板をアイロンのように熱し、そこに一枚ずつはがした紙を大きな刷毛を使って空気が入らないよう貼りつけて乾燥させます。
手漉きの和紙の裏面に刷毛のあとが見られるのはこのためです。
今ではほとんど鉄板が使われていますが、昔は木の板に貼り付けて天日乾燥させていました。

刷毛で貼り付け
乾燥

ついに和紙の完成です。
それぞれの工程で、職人の熟練の技術が必要とされる手漉きの和紙。
ようやく出来上がった和紙は、必要なサイズに裁断されて製品になります。

機械漉き紙の製法

全てにおいて手漉きとは比べものにならなほど大きな機械を使います。
大きな機械を使うことで、手漉きに比べて効率的に大量生産が可能となります。

機械漉きの機械

離解(りかい)

大きな釜で機械を使い攪拌しながら、原料を煮ます。
手漉きとは違い、パルプが主原料です。

離解

叩解・洗浄

大きな釜で繊維質を叩き、繊維と繊維以外のものに分離させて、さらに細かい繊維を取り出します。
叩きほぐすことで繊維がほぐれ、細かく柔軟になります。
さらにたっぷりの水の中で攪拌していきます。
ここでも手漉きよりも大きな機械で行います。

紙漉き、脱水

大きなベルトコンベアー式の機械を使い、すのこの代わりに硬い毛布を使用して紙を漉きます。
毛布伝いに水分が下に落ち、紙の素が毛布の上に残ります。
その後、いくつかの巨大なローラーで圧力をかけ、脱水を行います。

紙漉き、脱水

乾燥

大きなドラム型のアイロンをあてて巻きながら、直接乾かします。
アイロンをあてた面がツルッとしたきれいな紙の表になります。
紙の裏面には毛布があてられていますので、手漉き紙のような刷毛目が紙に残りません。
ドラムから出てきた紙をロール状に巻き取り、各サイズに裁断します。

乾燥

「手漉き」と「機械漉き」の見分け方

           
手漉き機械漉き
紙の裏面 刷毛目がある。刷毛目がない。全体的にうっすらと毛羽立ち(毛布の跡)がある。
すのこ目(すの目とも) すのこ目がある。すのこ目がない。

刷毛目

手漉きの和紙は、乾燥させる際に大きな刷毛を使うため、紙の裏面に刷毛目が残ります。
ちなみに、厚い紙には腰の強い刷毛を使うため刷毛目がしっかりつきますが、薄い紙には柔らかい刷毛を使うため刷毛目はうっすらです。

すのこ目

紙を漉く際に、手漉きの場合はすのこ(すだれ)を使うため、紙の表面にすのこ目(すの目)という縦横の線ができます。
手漉きに似せた機械漉きの紙にも、すのこ目がある場合があります。

手漉きのすのこ
すのこ目(すの目)

“手漉きの紙=よくにじむ” ではない理由

ニジミは、原材料の配合や薬品によるニジミ止めで調整できる

機械漉きだからニジミが少ない、手漉きだからニジミが多いというイメージをお持ちの方も少なくないようですが、実際にはそういうわけではありません。
機械漉きでも手漉きでもニジミの調整を行うことができます。
近年はニジミの少ない紙が好まれる傾向があるので、相対的にニジミが少ないように調整されている紙が多くなっています。
和紙は主原料である楮・三椏・雁皮の割合が多くなればなるほどニジミが少なくなりますし、薬品を使ってニジミの調整をする場合もあります。

ニジミの調整(サイジング)が行われるようになった背景

昔は紙が漉かれた後、工場で一定期間寝かされた上で出荷され、問屋様・小売店様での寝かす期間を経て消費者に届き、さらには消費者が一定期間紙を寝かした上で使用されてきました。
完成後の紙を「寝かす」工程が、いくつもの段階でなされていたのです。
近年では、消費の減少とともに紙を「寝かす」という工程が省略されるようになってきています。
そのため、消費者が購入後すぐに使用できるようにと、薬品を用いてニジミの調整を行うようになっています。
このニジミを調節する薬品をサイジングと呼び、おおよそ10段階に分けられ、ニジミが調整されています。
工場から消費者の手に渡るまでの期間を想定して調整が行われているため、消費者は紙を寝かすことなくすぐに使うことができるようになっています。
すぐ使えて便利な反面、ニジミ止めが施された紙は「紙を寝かす」ことで紙質が大きく変わり、別の紙と思えるほどに変化してしまうことがあるので注意が必要です。 (一方、ニジミ止め加工が施されていない紙は「紙を寝かす」ことで水分や糊気が飛び、ニジミが抑えられたり、紙が締まることで書きやすい紙になります。)

紙の出荷

その他にも書道紙には、ニジミ止めに胡粉(ごふん)が使われているものもあります。
胡粉が施された紙は、さらっとした手触りとマットな質感で白色が美しいのが特徴です。
表面に細かい粉をまぶしたような質感なので、筆運びに少し引っかかりを感じますが、墨とのコントラストが美しくニジミにくい紙だと言えるでしょう。

玉山

▲ 胡粉が使われている書道紙「玉山」

まとめ

書道紙の「手漉き」「機械漉き」についてご紹介しました。
「こんな表現がしたい!」と思ったときに、「なら、こういう紙を使えばいいんだ」ということがわかるようになると書道がもっと楽しくなります。
今回は書道紙の製法による違いをご説明しましたが、手漉き紙といっても、もちろん種類によって書き味は全く異なります。
機械漉きでも同様です。
さまざまな紙をお試しいただき、書道紙の奥深さを体感していただけますと幸いです。

書遊Onlineでは、800種類以上の書道紙を取り扱っております。

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